愛犬の多飲行動から考えられる体調の変化

水をあまり飲まない愛犬が、急に自ら飲みたがるようになると、飼い主は誰でも突然の変化に驚くものです。
夏場であれば、発汗によって失われた水分を補給する為に、急に水を大量に飲むことはあるでしょう。
また、服用している薬の副作用でも、水の飲み方が突然変わるケースはあります。

しかし、急な行動の変化には、重大な病気が隠れている場合もありますから、考えられる原因を一つずつチェックしておくことが大切です。

犬の体は人と同じく、体の約6割から7割を水分が占めています。
この割合に対して水分が減少すると、脳は水分不足と判断し、喉の渇きを認識させて水分補給を促します。
体の水分が減少すると、血液は粘度が増して流れにくくなったり、血栓が発生する原因にもなります。
更に、リンパの流れや細胞の働きも低下するので、全身的な体調不良にも結びつきかねません。

1割以上の水分を失うと、痙攣や意識朦朧といった症状を発症しますから、適度な水分補給は欠かせないといえるでしょう。
ただ、通常は食事を正しく摂取している限り、汗だくにでもならなければ、重大な水分不足が発生することは稀です。

注意した方が良いのは、体の水分が不足していないにも関わらず、水を欲しがって大量に飲んでしまうケースです。

糖尿病

例えば、糖尿病の症状の一つには、喉の渇きと大量の水分補給が挙げられます。
糖尿病は副作用が表に出にくい病気ですが、症状が進行すると全身の水分が排尿に回され、同時に喉の渇きが表れます。
これは、血中に増えた糖質を体から排出するのが目的で、脳の判断によって起こる症状です。

食欲があるのに体重が減少していれば、水の多飲と合わせて、糖尿病の疑いが濃厚になるでしょう。
発症原因は、ストレスや加齢に免疫疾患など様々で、食べすぎや運動不足も関係しますが、必ずしも生活習慣だけではありません。

糖尿病の放置は、合併症の発症に繋がりますし、場合によっては腎不全も引き起こしかねないので、水の飲み方が気になったら、速やかに医師に相談することをおすすめします。

クッシング症候群

愛犬が急に水を飲みだし、それが頻繁に起こる原因には、クッシング症候群も理由の一つに考えられます。
クッシング症候群とは、コルチゾールの過剰分泌が引き起こす病気で、単独で自然発生する場合と、他の病気と併発するケースがあります。

代表的な症状は多飲多尿で、時には失禁をしたり、異常な食欲が見られる場合もあります。
お腹が不自然に膨らみ始めたり、左右対称に痒みを伴わない脱毛が表れることもあるので、これらの症状にも注意して観察した方が良いでしょう。

運動を嫌がる、運動をしても直ぐに息切れする、筋力が低下して痩せ細るのもクッシング症候群の症状ですから、水の多飲に限らず、複数の特徴が合致したら病気を疑うことが肝心です。

腎不全

一方、腎不全は腎臓の機能が低下する病気で、クッシング症候群に似た症状はあるものの、異なる症状によって違いを判断することが出来ます。
腎不全では食欲不振が見られ、下痢や嘔吐を繰り返したり、体が痩せて元気がなくなるのが特徴です。

特に、慢性腎不全では多飲多尿が表れますから、一刻も早く原因や状態を特定する必要があります。
糖尿病と同じく、腎不全は放置しても自然回復する可能性が小さいので、適切な治療や対処が飼い主に求められます。

腎臓は症状に伴い、血液の濾過機能が低下している状態なので、症状の放置は全身症状への移行リスクを高めるでしょう。

子宮蓄膿症

急に水を飲む、この症状に当てはまる原因としては、避妊していない雌犬限定で子宮蓄膿症も該当します。
子宮蓄膿症は、子宮内に膿が溜まってしまう病気で、大腸菌やブドウ球菌などの細菌感染が原因とされています。
細菌に感染して症状が出始めると、犬は元気を失って食欲不振の様子を見せます。

加えて、発熱や外陰部の腫れ、そして腫れと共に膿が出ることもあるので、子宮蓄膿症は他の多飲原因よりも分かりやすさがあります。

勿論、素人知識で子宮蓄膿症を判断することは出来ませんが、症状が合致して多飲多尿が見られれば、子宮蓄膿症を疑うのは自然の流れとなるでしょう。
ただし、多飲多尿には類似の症状が幾つもありますし、逆に一過性の喉の渇きもあり得るので、最終的には専門家に判断を仰いで対処法を決めることが重要です。

最後に

糖尿病やクッシング症候群は、食生活の改善や薬の治療によって、健康状態を大きく取り戻せる可能性があります。
腎不全は急性だと、対処の遅れで症状が悪化したり、状態次第で命の危険に晒されることも珍しくありません。

油断が悪化に結びつく病気ですから、悪化するリスクが高まる前に、愛犬の体の状態を詳しく調べるのが得策でしょう。
子宮蓄膿症は雌犬特有の病気なので、雄犬の多飲の原因からは除外することが可能です。
避妊していない雌犬、という条件もありますから、避妊を済ませている愛犬もまた除外することが出来ます。

当てはまる症状や条件を確認すると、多飲を引き起こす原因に見当がついたり、病気の判断材料や適切な対処のヒントが得られます。
愛犬が急に水を飲み始め、多飲が習慣的になったら、専門家に原因を特定してもらうのが最善の判断となります。