肝臓は、体内に取り入れた栄養を分解、合成を行い、毒素の排出や栄養素の貯蔵等を行うとても重要な臓器です。
けれど、重要故に我慢強く症状を表に出さない沈黙の臓器でもあります。
症状が出始めた時にはかなりの進行が見られると言われる肝臓の病気。
何故悪くなるのか?その原因と肝臓に負担をかけない為にはどうすればいいのか。
日々の食事の見直しと工夫で、肝臓への負担を減らしていきましょう。

肝臓ってなに?

肝臓はおよそ1500種類の働きを担う重要な臓器です。
口から取り入れられて吸収した食物を分解し、無害化する働きを主に行いますが、その取り入れた栄養を保存したり、血液の主成分を作る働きをします。
体内に取り入れられてしまった毒素や、体内で生成された毒素も分解して無害にする働きも行います。

口から体内に取り入れたタンパク質はまず小腸で分解され、肝臓へと運ばれます。
そして運ばれてきたタンパク質を必要な成分へと変えて全身に送る準備をします。
血糖値の調節や炭水化物、脂肪の代謝を助け、ビタミンC以外の全てのビタミンを生産し、蓄積します。

食べ物から取り入れたブドウ糖を貯蔵し、必要な時に身体に送ります。
食べ物の消化をするために必要な胆汁も、肝臓で生産しています。
肝臓は体内に入った全てのものを自分の身体に必要な成分に作り変えて、全身へと運びます。
体中に行きわたって残った栄養分は、身体の中にエネルギーとして蓄えられて必要な時に使われることになります。

そうして絶え間なく働き続ける肝臓は多少疲れていても自己再生力が強い臓器の為、時間をかけても自分で治してしまう臓器でもあります。
生きていくためにはとても重要な臓器なため、全体の75%を病気で切除しても、2カ月ほどかけて再生する事が出来ます。
それゆえに、目に見えて肝臓の具合が悪くなったと思った時には重症化している事も多く、早目の気づきと予防が大切な臓器です。
 

肝臓の病気ってどんな数値を見ているの?

血液検査で数値を確認します。
肝臓に関する数値が高いからと言って必ずしも肝臓が悪いわけではありませんが、他の要因のせいで肝臓が活発に動かざるを得ない状態になっている事もあります。
まずは、数値を確認してそこからさまざまな原因を探していきます。

肝臓の疾患を調べるための数値は、ALT(GPT)、AST(GOT)、場合によってALPやGGT (γGDP)と言った数値を調べます。
ALTは肝臓に多く含まれている物質で、GPTと同じ物質です。
血液中にはあまり無い物質なので、肝臓にダメージがあるときに血液中に流れ、数値が高くなります。

ASTは、肝臓のほかにも赤血球や心筋などにも含まれ、肝細胞がダメージを受けて壊れてしまうと、血液中に流れて数値が高くなります。
ただ、ASTのみが上昇している場合は、筋肉がダメージを受けている時があります。
ALTやALKP、その他の数値と組み合わせて結果を見ていくことになります。
一つの数値だけを見て結果を出すのではなく、数値の後にエコー等の検査をして確認をしていきます。

肝臓が悪くなるとどんな症状が出るの?

初期の頃には殆ど症状は出ませんので、見た目や様子だけで初期発見をする事はなかなか難しいです。
症状が出始めると、

・食欲がない、元気がない
・嘔吐する
・下痢や軟便などお腹を壊す
・お水を飲む量が増えおしっこの回数が増える
・体重が減る
・歯ぐきや白目が黄色くなる
と言った事が出てきます。

最初の方の症状で肝臓病を想定する事も難しいと思いますが、体重の低下や黄疸と呼ばれる黄色くなる症状が出てきたらすぐに病院へ連れて行って下さい。

どうして肝臓が悪くなるの?

肝臓が悪くなるとは、肝臓の機能が損なわれている状態の事全体をさします。
原因を特定することは難しく、いくつかの原因が複合されて悪くなる事も多いのです。

日々の食事が負担になっている

愛犬の肝臓が悪くなる原因は毎日与えている食事が、実は肝臓に負担をかけていたという事があります。
添加物の多いドライフードやジャーキーなど、気付かないうちに与えている物が負担をかけていると言う事になるかもしれません。

感染性のもの

ウイルスや細菌、寄生虫などによって起こるものがあります。

慢性肝炎や肥満

中毒性や感染性、代謝性など原因がわからず、慢性的に肝臓に負担をかけ続けている事が多い。
先天性の疾患が無く肝臓が悪い場合は、ほとんどが慢性的な肝炎症状を起こしています。
また、肥満気味の子は肝臓に脂肪が付いた、いわゆる「脂肪肝」と言われる状態になっている事もあります。

先天性のもの

「門脈体循環シャント」と呼ばれる病気です。
通常、健康な犬であれば本来肝臓に入るべき胃腸から流れてきた血液が、シャントと呼ばれる通常には存在しない血管を通過して、肝臓の中でろ過。いわゆる解毒をされないまま、また体内に戻される病気の事を言います。

本来ならば門脈と呼ばれる胃腸から送られてくる血液を運ぶ専用の血管を通り、肝臓で綺麗に解毒されてから後大静脈と呼ばれる血管を通って全身に血管を届けます。

ところが、シャントと言う余計な血管の近道が、後大静脈と門脈を繋ぐ間に出来てしまい、肝臓できちんと解毒作業が行われてから体中に巡るべき血液が、肝臓に到達する前に後大静脈の中に紛れ込んでしまい全身に回ってしまいます。

胃腸から送られてくる解毒前の血液は、アンモニアなど多数の毒素が含まれています。
この毒素をきちんと解毒してからでないと、毒素が体中に回り害を及ぼしてしまいます。
遺伝性のものと後天性のシャントがあります。

後天性の場合は門脈との異常な血圧上昇が原因で発症します。
その原因となるものが慢性肝炎や胆管閉塞、肝硬変など肝臓や胆嚢の病気が原因です。

肝臓を守るには負担をかけない事が大切

肝臓は常に働く頑張り屋さんの臓器です。
口から入った食べ物はまず肝臓を通り身体の中で利用できるように分解され、形を変えます。

その時に、肝臓で分解する為に沢山の力を使う食事やおやつを続けていると、肝臓の働きがどんどんとオーバーヒートしていきます。
肝臓は、口から食べ物や毒素が取り込まれるとそれを身体に必要な状態に変化させるために常に動いてしまいます。

休んでいていいよ、と言われても、何かが体内に入る限りは休むことが出来ない臓器です。
人間にもお酒を飲んだら数日休肝日が必要なように、愛犬の肝臓もゆっくりとさせる事が必要です。

肝臓に負担をかける食事とは

トウモロコシや小麦、添加物を多く含むドライフードは愛犬の肝臓に大きな負担をかけます。

また、脂肪分が多すぎるもの、消化が出来にくいもの、毒性の強いものは、肝臓が頑張って消化をし毒素を抜こうと全力で働きます。
毒を抜くため働く時間が長くなると、ずっと働きぱなしになり休む事が出来ません。

絶え間なく働く事で、肝臓に大きな負荷が掛かり負担となっていきます。
高エネルギーの食事やおやつを大量に一度に与えすぎないよう気をつけないといけません。

そう言えばご飯の合間によくおやつを与えているな、と感じられた飼主様は、一旦おやつを止める事で肝臓への負担を軽減する事が出来ます。

肝臓に負担をかけない食事とは

肝臓病を防ぐための負担をかけない食事は、高タンパク低脂肪の質の良い食事です。
良質なタンパク質の食事は、肝細胞の再生に欠かせません。
良質なタンパク質とは、アミノ酸スコアが100に近いものを言います。

アミノ酸スコアは、食品中の必須アミノ酸の含有比率を評価するための数値で、タンパク質と必須アミノ酸のバランスが良く含まれている物ほど良質で、良質なものほど数値は100に近くなります。

犬の身体に必要な新鮮な肉、酵素が多く含まれる納豆などの発酵食品や乳製品が肝臓に優しく負担を軽減します。
添加物の入っていない、犬本来の食事に近い新鮮な食事が、肝臓への負担を減らし愛犬を元気にしてくれます。

肝臓への負担を考えたときにおススメ出来るタンパク源の一つは、生の馬肉です。

生の馬肉は消化が良く、鉄分やミネラル、良質なタンパク質の条件であるアミノ酸を豊富に含み、犬の肝臓にもとても優しい食べ物です。
納豆のタンパク質も消化吸収に優れていますので、肝臓に負担をかけません。

消化に良いものほど肝臓への負担は軽減しますので、消化の良い炭水化物も予防に役立ちます。
消化に良い炭水化物は糖分の利用を高め、肝臓にエネルギーを十分に与えることで、肝臓を修復し再生させます。
また、消化に良い炭水化物は体に有害となるアンモニアの生成も抑えます。

日々続けるための、肝臓に良い食事の目安となるもの

高タンパク

良質なお肉(脂身は避ける)、生肉や生食・白身魚・納豆などの大豆製品・卵 などの食品をメインにしてみましょう。
馬肉や白身のお魚の良質なタンパク質。納豆の大豆たんぱく質は効率よく摂取できるタンパク質な上、腸内環境にも効果的です。
沢山の量を一度に与えるのではなく、愛犬の腸を慣らすためにはじめは少量ずつ与えてみましょう。

低脂肪

脂肪は肝臓に負担をかけますので、脂身の多いものや人間の砂糖などの糖類は与えないようにしましょう。

アルギニンや亜鉛、L-カルニチンを多く含んでいるフードや食品を使う。

アルギニンや亜鉛は、肝臓の代謝を助け、肝機能の改善を助けます。
アルギニンは大豆製品に多く含まれていますので、納豆や豆腐がおススメです。
亜鉛は練りゴマや牡蠣に含まれていますので、少量ずつトッピングして使う事がおススメです。

トウモロコシや穀類は避ける

ドライフードのパッケージの裏に、トウモロコシ、トウモロコシミール、小麦粉、ピートパルプなど穀類が記載されているフードは一旦お休みしてみましょう。

消化の良い炭水化物を与える

軟らかく炊いた白米や玄米、芋類、大豆類はトッピングもしやすく糖分を分解してくれます。

添加物の多いジャーキーやおやつはやめる

しつけのご褒美など何かと出番の多いジャーキーやおやつですが、高カロリーであったり小麦粉が多かったりと肝臓には負担になるものが多く入っている場合があります。
肝臓の元気のためには控えた方が良いと言えます。
トレーニング等に使うには、フリーズドライの納豆や豆腐などで試してみて下さい。

シニア用やダイエット用のドライフードには

タンパク質が足りない事があるので、肝臓の健康や身体を作るために良質なタンパク質のトッピングをおススメします。
高カロリーの物よりも低カロリーで高タンパクの物でないとあまり意味がありません。
手軽にできる生馬肉のトッピングや、納豆のトッピングで補ってあげて下さい。

最後に

肝臓は悪くなって症状が出てしまうとなかなか元の状態には戻れません。
健康診断などで数値が少し高くなっていると気付いたら、すぐに食事を見直してみましょう。

数値が高いだけだったり、少し吐く様になったな、といった初期の段階では食事療法やお薬で治す事が出来ますが、気付くのに遅くなってしまったら、命にかかわる病気になります。

そうなる前に、飼主様の愛情と少しの食事の工夫で、肝臓が悪くならないように予防をしてあげてくださいね。